【食育②】園内で育てた野菜を自分たちで収穫!「さくらぎ保育園」から学ぶ食育の取り組み

【食育②】園内で育てた野菜を自分たちで収穫!「さくらぎ保育園」から学ぶ食育の取り組み

自分たちで栽培した大根を収穫する子どもたち。大きな大根にびっくり!

東京都西多摩郡にある「さくらぎ保育園」は、食育に力を入れている保育園です。前編では、食育活動のひとつである、セミバイキング形式の給食についてご紹介しましたが、今回は園内で行っている「野菜栽培」について、園長の宮林佳子さんと栄養士の佐藤瞳さんに話をうかがいました。「さくらぎ保育園」では、どのような目的で、どんな野菜を育てているのでしょう。そして野菜栽培にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

野菜を「育てて、食べる」体験で楽しく食育

――園内で育てている野菜の種類を教えてください。

宮林:いまは、大根とじゃがいも、そしてのらぼう菜という、西多摩地域の伝統野菜を育てています。冬場は種類が少ないのですが、夏にはきゅうりやトマト、なす、とうもろこしなど、たくさんの野菜を栽培します。さつまいもや玉ねぎ、ピーマンなどを育てることもありますね。

――野菜を栽培する際、子どもたちはどんな役割を担うのでしょう。

宮林:種まきや苗植えから水やり、草むしり、収穫といった、ほぼすべての工程に関わっています。子どもたちは野菜を育てるなかで、土の感触を確かめたり、虫を見つけたりしていますが、そうやって自然と触れ合うのは、食への興味関心を育むうえで、とても良い経験だと思います。

収穫した野菜は、給食やクッキング活動にも使用しているので、自分が育てた野菜を調理したり、食べたりする楽しさも感じているのではないでしょうか。ちなみに、今年度は4歳児がピーマンを育て、それをピザにして食べるという活動を行いました。

――野菜を育てることに関して、子どもたちや保護者の方の反応はいかがですか。

佐藤:すごく新鮮な反応をする子が多いですね。さつまいも掘りでは、「えー、さつまいもって土の中にあるんだ!」と驚いている子もいました。

宮林:保護者の方からは、「家ではなかなか土に触れることがないので、保育園で土や野菜に触れる機会があるのはとてもありがたい」といった声をいただいています。畑に行くと服が汚れてしまうのですが、それに対してクレームを受けたこともありませんね。逆に「畑に行けてよかった」と好意的な意見がとても多いです。

さつまいも掘りをする子どもたち。次々に出てくるいもに興味津々。

――畑が子どもにとって身近な存在になることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

宮林:自分たちの口に入る食べ物がどうやって育つのか、畑での活動を通して知ることができるのは、大きなメリットだと思います。普段の生活では、トマトがどうやって育てられて、どうやって収穫されるのか、なかなか見る機会がないですよね。でも、保育園で育てていれば、小さい種から芽が出て枝が伸び、そこに小さい緑色の玉ができて、だんだんと赤いトマトになる……。といった成長の過程を間近で観察できます。

「自分で育てた野菜だから、苦手だけれど食べてみよう」という気持ちになった子や、「みんなが楽しく食べているので、自分も一緒に食べてみた」という子もたくさんいるんですよ。

――とはいえ、うまく育たないこともあるのでは?

宮林:おっしゃる通り、いつもうまく育つわけではありません。でも、失敗することも大事な学びだと思っています。野菜栽培を通して、「ときには失敗もあるけれど、それをどうやって乗り越えていくかを考えることが重要なんだよ」と子どもたちに教えていけたらいいなと。先日、さつまいも掘りをしたところ、葉っぱは青々としてとても大きいのに、土のなかに埋まっているいもはとても小さかったんです。なので、「畑って難しいね」「小さいけれど、こんな風にしたらおいしく食べられるかもしれないよ」などと子どもたちと話し合って、次につなげていくことにしました。失敗から学べることも多いので、小さい頃から畑と触れ合うメリットは大きいと感じていますね。

――園内で野菜を栽培するうえで、苦労されている点がありましたら教えてください。

佐藤:大変なのは、収穫の時期を見極めることです。収穫時期は野菜によって異なるのですが、子どもたちの行事やクラスの予定の関係で、思い通りの時期に収穫できないこともあります。なので、園児の予定と収穫スケジュールを合わせるのは、かなり難しいですね。

ただ、周辺の農家の方が、当園の畑のことをとても気にかけてくださっていて、「もう肥料をまかないとダメだよ」などとていねいに教えてくださるんです。おかげで、とても助かっています。

自分たちで栽培した野菜は、クッキングに使用することも。

――今後、取り組んでみたい食育活動があれば、ぜひお聞かせください。

宮林:コロナ禍で今までのように取り組めなくなってしまった活動がたくさんあるので、それを復活させたいです。園で育てた野菜を使ったクッキングも、コロナ禍では思うように実施できませんでした。クッキングのときは、子どもたちがすごく生き生きとした表情になるので、ぜひ機会を増やして、クッキングを楽しむ姿をたくさん見られたらと思っています。 また、現在は子どもと職員が一緒に給食を食べる機会もなくなってしまったので、早くもとに戻したいと思っています。子どもたちは食事の時間に、家での出来事や日々の発見などさまざまな話をしてくれます。ですから、また一緒に食事をして、たくさんのお話を聞かせてほしいですね。

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー

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