取材・文/原 あいみ 伊藤 律子(京田クリエーション)
撮影/筒井 聖子

イヤイヤ期真っ最中の“にこちゃん”が主人公の人気絵本『おにのこ にこちゃん』(発行:ポプラ社)と、マイナビ保育士によるコラボ企画がスタート! 有識者のインタビューや保育士のみなさんからのアンケートをもとに「理想の園」を考え、にこちゃんが入園予定の「はらっぱえん」として絵本に登場させる夢のプロジェクトです。第1回は、にこちゃんの文を担当するケロポンズのおふたりと、絵を担当する原 あいみさんの対談をお届けします(全6回予定)。

『おにのこ にこちゃん』についてはこの記事もチェック

人気の絵本『おにのこ にこちゃん』シリーズは、文をケロポンズさん(写真左・平田 明子さん、写真右・増田 裕子さん)、イラストは原 あいみさん(写真中央)が担当。
ケロポンズさん

【プロフィール】
ケロポンズさん

「エビカニクス」でおなじみの子ども向け音楽ユニット。『おにのこ にこちゃん』の文を担当。「ステージのおもしろさは宇宙的」と評判で、子どもに人気の定番体操曲「エビカニクス」のYouTube動画再生回数は、脅威の1億2000万回(2022年11月時点)を記録しています。増田 裕子さん(ケロ・右)は大学卒業後に、4年間幼稚園に勤務。平田 明子さん(ポン)は、1993年より5年間、子どもに寄り添う保育を実施する「りんごの木子どもクラブ」で保育者を務めていました。

原 あいみさん

【プロフィール】
原 あいみさん

イラストレーター。『おにのこ にこちゃん』の絵を担当しているほか、企業や商品のイメージキャラクターも数多く手がけています。難しいことをわかりやすくマンガで伝えることが得意で、2歳だったころのわが子をモデルに、リアルで愛くるしい“にこちゃん像”を作りあげました。Twitterにて、にこちゃんのマンガ「きょうもにこまるけ。」も配信中(毎週水曜朝8時)。

園は子どもにとって「もう1つの家」であるべき!

2018年から5冊の『おにのこ にこちゃん』シリーズを制作してきた3人がそろい、和気あいあいと対談がスタートしました。左からポンちゃん、ケロちゃん、原 あいみさん。

原 あいみ(以下、原):本日はよろしくお願いします! 過去に、幼児教育の現場でお仕事をされていたケロちゃんとポンちゃんには、保育者としての目線を交えながら、「理想の園」についてのお話を伺えたらなと思っています。

ケロポンズ(以下、ケロ、ポン):よろしくお願いします!

:さっそくですが、子どもにとって「理想の園」とは、どういう園だと思いますか?

ケロ:子どもたちのなかには、家にいるよりも、保育園にいる時間のほうが長い子もいる。寝る時間をのぞけば、1日の大半を過ごす自分の居場所だよね。だから、子どもたちにとっての「もう1つの家」みたいな存在であることが理想かな。ありのままに、リラックスして過ごせるような場所であってほしい。

ポン:いまの話にもつながるけど、やっぱり「その子のままでいていいよ」という思いが伝わる環境がいいよね。保育者が「いろいろ教えなきゃいけない」とか「しつけなきゃいけない」と気負っている園じゃなくて。

:いろいろ教えなくていい、ということですか!?

ポン:私は、神奈川県横浜市にある「りんごの木子どもクラブ」という園で保育を担当していたんだけど、仕事をはじめたばかりのころは「いっぱい教えなきゃ!」って意気込んでいたの。自分自身もしつけとか、これしちゃダメ、こうしたほうがいいって育てられてきたから。それで、園長の柴田愛子先生に、まずなにからはじめればいいかを伺ったら、返ってきたのは「なにもしなくていいの、子どもと遊べばいいの」っていう返事だった。「えーっ!?」って思って、「そうは言っても、大人としてやることあるんじゃないですか?」って聞いたんだけど、「大人としてとか、考えなくていいから」と(笑)。しばらくしてわかったんだけど、子どもの中に全部答えがあるっていうか——。その子の持っているものが、伸びていくのを信じて見守るのが大切なんだよね。

ケロ:「寄り添う保育」だね。教育学者の汐見稔幸先生もおっしゃっていることだけど、大人が子どもにとことん寄り添うことが大切だと思う。

「できない」と「けんか」をチャンスにすることが大事

幼児教育の現場で働いていた頃の体験談を語り合う、ケロちゃんとポンちゃん。子どもたちに教えられたこともたくさんあるとか。

ポン: 2歳児クラスに入ったときも、ついしゃかりきになって「なにかしなきゃ!」と思っていたな。「靴はね、ここをベリッとやってから、足を入れてごらん」みたいなことを毎日やってた。そしたらある日、ペアの先生に呼ばれて「ポンちゃん、ずいぶん手伝ってるね」って言われたの。だから「2歳児って大変ですもんね」って返したら、「できないことは、子どもができるようになる“チャンス”なの。そのチャンスを奪わないようにしてあげてね」って。そこでようやく、「あぁ、そうか。私はチャンスを奪っていたんだ」と気がついたんだよね。

:親もつい、手伝ってしまいがちです。

ポン:子どもがやろうとしている気持ちを置き去りにして、「急がなきゃ」とか「汚されたくない」とかの大人都合で、引っ張ったり、まとめたりとやってあげちゃいがちだよね。でもそうじゃなくて、大人は子どもがやっていることをじっと見守って、じゃましないことが理想なんだよ。

:子どもを信じて、待つことが寄り添うことなんですね。大人にとっては、ある意味試練かも……。

ポン:クラスで起こるケンカも、「どした〜! ちょっとストップ!」って、全部止めていたんだけど、ほかの先生に「ケンカもね、チャンスなんだよ。子どもが『もうイヤだ〜、誰か助けて!』ってなるまで、見守ってみようか」って教えてもらったの。その言葉で、すごいすっきりしたんだよね。ありのままの子どもを受け入れて、自分もそのままでいればいいんだと気がついた。

ケロ:そうやって、先生が子どもを俯瞰して見るのはすごく大事かも。

:親は自分の子どもを俯瞰して見られないので、先生にそれをやってもらえるのはありがたいですね。

先生だって「得意・不得意」があっていいと思う

原さんは、娘さんを合計3ヵ所の保育園に通わせた経験があるそう。そのため母親目線でも、ケロポンズが話す理想の園に興味津々の様子。

:保育士さんと園は、どういう関係が理想だと思いますか?

ポン:先生にも得意・不得意があるわけだし、それを踏まえたうえで、その人らしい保育ができるといいよね。全部をそつなくこなせる人なんていないんだから、得意なこととか、好きなことを集中してやれる園が理想だと思う。子どもだけじゃなく大人も。たとえばピアノが苦手な先生が、無理してがんばって、それでもできない自分を卑下して、「こんなの許せない!」ってなったとする。そうなっちゃうと、子どもができないことに対しても、許せなくなりそうじゃない?

:すごくわかります。親も先生も、子どもの前では「立派にやりきらなくちゃ」と思いがちですよね。

ケロ:あと、園長先生だったり先輩保育士だったり、上の先生からの圧があるのも考えもの。現場の先生が、「好きなことを伸ばしたい」とか「子どもにもっと寄り添いたい」と思っても、「ちょっとそれはダメよ」と、止められることがあるから。園長先生をはじめ、園全体がおおらかでいることも理想だね。

コンサートで全国を回り、たくさんの子どもたちと触れ合うケロポンズ。「コンサートごとに子どもたちの反応がさまざまで、とても興味深い」と話します。

おもちゃじゃなくて、何だかよくわからないものを置きたい(笑)

:園の設備とか、環境面での理想ってなにかありますか?

ポン:これも私が勤めていた「りんごの木子どもクラブ」の話なんだけど、ちゃんとしたおもちゃはあまりなくて、ガラクタみたいなものがたくさん用意されていたの(笑)。

ケロ:なんか、スカートがいっぱいあったよね。

ポン:そうそう! お母さんたちが縫った木綿のゴムスカートとか、よくわからないヒラヒラしたものとか。でも子どもたちは、それをからだに巻いたりして楽しそうに遊んでるの。子どもって驚くほど想像力が豊かで、「これでなにするの?」「なんに使うの?」と言いたくなる道具で、思わぬ遊びを考えたりするんだよね。

:「よくわからないもの」を使って、子どもの考える能力を引き出すわけですね。

ケロ:決まった遊び方がないのって、逆におもしろいよね。

:ちなみに私は、思いっきり暴れられる、でもけがをしないボヨンボヨンルームとか、楽器や音が鳴るものがたくさんある音楽ルームがほしいです。

ケロ:ボヨンボヨンルーム、楽しそう!

ホワイトボードに、次回作でにこちゃんが通う予定の「はらっぱえん」の想像図を描きながら、それぞれのイメージを膨らませる3人。

子どもを頼る・信じる・ミーティングする園ってよくない?

:最後に、『おにのこ にこちゃん』の絵本の世界に入っていきましょう。今までのお話を踏まえて、「どんな園だったら、その子らしく育てていけるか?」という妄想を膨らませていきたいです。絵本を描きながら「個性豊かな仲間がいる園で、1人の子どもに1人の先生がついているような園がいいな!」なんて思ったりするのですが、それはさすがに現実的じゃないですよね。

『おにのこ にこちゃん』のアナザーストーリーがTwitterで読める、マンガ「きょうもにこまるけ。」より。にこちゃんの住む世界の多様性が伺えます。

ポン:年長さんとか年中さんは、園のことも、先生のことも、敷地の中のこともよくわかってる。だから上の子が下の子を助けたりするような、縦割り保育の園なんてどうかな?

ケロ:「あそこには虫がいっぱいいる穴がある」とか、「ここは秘密基地だよ」「ここはちょっと危ないよ」とか、「この木は登りやすいけどこの木は登りにくい」とか、年中さんや年長さんは全部知ってるよね。先生だけでなんとかするんじゃなくて、子どもを信じて子ども間で助け合う園って、いいと思う。

:なるほど! 自分と違うお友だちとの関わり、多様性についてはどうですか? 

ケロ自分と違うから排除するんじゃなくて、毎日一緒に過ごして、それが当たり前になることが大事。最初は「へんなの〜、なんでカッパちゃんってお皿が乾くの?」とか悪気なく言っちゃうんだよね、子どもって。でも、そこで「そんなこと言うのはやめなさい」って先生が言ったらアウト。悪いことだと思わせてしまうから。そうじゃなくて、「どうしたらいいかな?」とみんなで集まって、ミーティングするような場を作るのが理想的かな。

ポン子どもって理解しさえすれば、多様性みたいなものもすぐに受け入れられるしね。

:話し合いの場を持つのはいいですね。絵本のなかの「はらっぱえん」でも、ぜひやってみたいです!

「もっといろいろな人に理想の園を聞いてみたいですね!」と話すケロポンスと原さん。たくさんの体験談が聞けて、有意義な対談となりました。
子ども向け音楽ユニット
「エビカニクス」でおなじみの子ども向け音楽ユニット。『おにのこ にこちゃん』の文を担当。「ステージのおもしろさは宇宙的」と評判で、子どもに人気の定番体操曲「エビカニクス」のYouTube動画再生回数は、脅威の1億2000万回(2022年11月時点)を記録しています。増田 裕子さん(ケロ・右)は大学卒業後に、4年間幼稚園に勤務。平田 明子さん(ポン)は1993年より5年間、子どもに寄り添う保育を実施する「りんごの木子どもクラブ」で保育者を務めていました。

公式ホームページ KAERUCHAN https://kaeruchan.net/
Instagram https://www.instagram.com/keropons_1999/

この記事をSNSでシェア