幼児教育に関わる仕事のひとつに、幼稚園勤務があります。
幼稚園で働くことを検討している人は、幼稚園の概要や仕組みをあらかじめ理解することが大切です。幼稚園で働くイメージを膨らませるためにも、ほかの施設との違いや働き方について知識を深めておきましょう。
本記事では、「幼稚園とほかの施設との違い」や「幼稚園における仕事内容」などについて解説します。幼稚園で働くことが向いている人の特徴にも触れるため、自分に合う職場探しのヒントとして活用してください。
幼稚園とは?ほかの施設と何が違う?
幼稚園や保育園などの施設は、子どもと関わる時間が長いことが共通点です。しかし、運営の目的や預かる子どもの年齢などには違いがあります。
ここでは、幼稚園の特徴と幼稚園で働くために必要な資格について解説します。幼稚園で働きたい人は、把握しておきましょう。
1. 満3歳以降の未就学児を教育する
幼稚園と保育園などのほかの施設との大きな違いは、運営目的と預かる子どもの年齢です。
幼稚園を利用できる子どもの年齢は満3歳以降の未就学児となっていますが、なかには「プレ保育」などの枠があり、満2歳から預かる幼稚園もあります。
幼稚園の特徴のひとつが、子どもたちの年齢や発達状況に合わせて必要な学びを提供していることです。幼稚園によって教育方針や教育レベルには差がありますが、子どもたちは読み書き・お絵描き・体操などを通じてさまざまなことを学びます。
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2. 文部科学省の管轄を受けて学校教育法に則る
幼稚園は、文部科学省が管轄する教育施設です。学校教育法に則る必要があり、保育園やほかの保育施設とは方針が大きく異なります。
幼稚園で行われる教育は、文部科学省が示す学習指導要領のひとつである「幼稚園教育要領」がベースです。幼稚園教育要領では、以下の5つを大きな柱としています。
・健康な心と体
・自立心や人と関わる力
・環境への好奇心や探求心
・言葉に耳を傾ける力や伝える力
・豊かな感性と表現力
(出典:文部科学省「学習指導要領「生きる力」」/https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/you/nerai.htm)
幼稚園で働く際には、それぞれの柱に対する「ねらい」や教育内容を理解した上で、子どもたちが人間形成に必要な経験や学びを得られるように勤めることが大切です。
3. 料金設定は公立・私立により異なる
令和元年10月1日から、幼児教育・保育の無償化制度が実施されています。幼稚園や保育園などの無償化制度の主な目的は、子育て世帯の「経済的負担の軽減」や「教育費の支援」です。
幼児教育・保育の無償化制度は、公立・私立を問わず全世帯が利用できますが、上限額が定められている幼稚園もあります。月額利用料が無償化の上限を超えている際や、給食費・保護者会費・教材費などがある際は実費負担です。
公立であれば月額利用料が上限内に収まりやすいのに対し、私立は上限を超えてしまう施設も少なくありません。
4. 勤務には幼稚園教諭免許が必要となる
幼稚園で働くためには、幼稚園教諭免許が必要です。
幼稚園教諭免許状は3種類あり、それぞれ取得方法が異なります。
取得方法 | |
---|---|
幼稚園教諭一種免許状 | 文部科学省が認める大学または短期大学専攻科を卒業 |
幼稚園教諭二種免許状 | 文部科学省が認める短期大学または専門学校を卒業 |
幼稚園教諭専修免許状 | 文部科学省が認める大学院修士課程を修了 |
文部科学省の調査によると、幼稚園教諭免許の種類別教諭構成で最も多い種類は、「幼稚園教諭二種免許状」です。
短大や専門学校で必要な知識を学び、幼稚園教諭免許を取得する人が多いことがわかります。
(出典:文部科学省「1.(2)免許状の種類別の教員構成」/https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1337053.htm)
なお、幼稚園と保育園の2つの機能を持つ「認定こども園」で勤務する際には、幼稚園教諭免許と国家資格である保育士資格の両方が必要です。
ただし、施設のタイプによっては、幼稚園教諭免許があれば採用されることもあります。
幼稚園・保育園・認定こども園の違い
子どもを預かる施設として、幼稚園のほかにも保育園や認定こども園があります。「子どもを一定時間預かる」という点では共通しているものの、それぞれの保育施設に特色があります。勤務を考える際には、どのような点が異なるのかを知っておくことが大切です。
幼稚園・保育園・認定こども園の主な違いは、以下の表の通りです。
幼稚園 | 保育園 | 認定こども園 | |
---|---|---|---|
所管 | 文部科学省 | 厚生労働省 | 内閣府・文部科学省・厚生労働省 |
根拠となる法令 | 学校教育法 | 児童福祉法 | 未就学児に対する教育・保育の総合的な提供の推進に関連する法律 |
目的 | 幼児教育 | 保育 | 幼児教育・保育・保護者への子育て支援 |
対象 | 3歳〜就学前の幼児(認定区分:制限なし) | 0歳〜就学前の保育に欠ける乳児・幼児(認定区分:2・3号認定) | 0歳〜就学前の乳幼児(認定区分:1・2・3号認定) |
預かり時間 | 4時間 | 8〜11時間 | 4〜11時間 |
資格 | 幼稚園教諭 | 保育士資格 | 保育教諭・保育士・幼稚園教諭 |
幼稚園は「教育」を目的としており、学校と同じように行事や長期休暇があることが特徴です。一方で保育園は「健やかな保育」を目的としているため、昼寝や給食があることに加え、預かる子どもに「保育を必要とする事由がある」ことが必要です。さらに、両者の良い部分を併せ持つ教育施設が、認定こども園であると言えます。
公立幼稚園と私立幼稚園の違い
幼稚園には、公立幼稚園と私立幼稚園の2種類があります。同じ幼稚園でも、公立と私立では働き方が異なる場合があります。それぞれのメリット・デメリットを把握し、自分はどちらの環境で働きたいかを明確にしておきましょう。
公立幼稚園と私立幼稚園の主な違いは、以下の表の通りです。
公立幼稚園 | 私立幼稚園 | |
---|---|---|
設置主体 | 地方自治体(市町村) | 学校法人、宗教法人、株式会社、財団など |
預かり時間 | 朝から昼過ぎまでが中心 | 夕方までの延長保育をしているところが中心 |
仕事内容の特徴 | 文部科学省の教育指針に従って働く | 独自の教育方針やカリキュラムに従って働く |
待遇 | 一般的に待遇がよく、昇給あり。福利厚生がしっかりしている | 園によって異なる |
異動 | あり | なし |
採用方法 | 幼稚園教諭・保育士共通試験 | 園ごとの独自の試験 |
公立幼稚園と私立幼稚園では、待遇や勤務時間・教育内容など、働く環境が大きく異なる場合が少なくありません。公立幼稚園では、公務員として文部科学省の指針に従い、柔軟に対応していくことが求められます。一方で、私立幼稚園は独自の教育方針・カリキュラムがあるため、勤務を希望する園の特色が自分に合っているかをしっかりと確認することが大切です。
また、公立幼稚園では数年に一度必ず異動があることに対し、私立幼稚園では異動がほとんどありません。私立幼稚園での勤務を希望する場合は、一緒に働く先生たちとうまくやっていけそうかどうかを判断するため、事前に見学することをおすすめします。
幼稚園教諭の平均年収
幼稚園教諭の平均年収を把握しておくと、応募先を選ぶ際に、給与額が平均年収に対して高いかどうかを確認できます。また、幼稚園と保育園の平均年収の違いを知っておくことで今後のキャリアを考えるヒントとなるでしょう。
幼稚園教諭と保育士の平均年収は、以下の通りです。
幼稚園教諭の平均年収 | 保育士の平均年収 |
---|---|
約383万円 | 約374万円 |
幼稚園教諭と保育士の平均年収を比べると、幼稚園教諭の方が高い傾向にあります。ただし、幼稚園や地域によって待遇は異なるため、応募先の給与が希望条件と合っているかをしっかりと確認しましょう。また、給与だけでなく働きやすさを考慮することも大切です。
なお、幼稚園教諭として給料アップを目指したい場合は、「園長先生になる」「国や園独自の手当を受ける」などの方法が挙げられます。しっかりと稼ぎたい人は、管理職求人や、各種手当が充実した求人に目を向けるとよいでしょう。
幼稚園における仕事内容
幼稚園における主な仕事は、さまざまな経験を通じて子どもたちに知識を身に付けさせたり、人間関係を学ばせたりすることです。各幼稚園が考える「重点を置くべきポイント」によってカリキュラムの内容は異なるため、幼稚園教諭が行う仕事内容は多岐にわたります。
また、子どもたちと向き合う時間だけでなく、お遊戯会や運動会などの行事や保護者との面談に向けた準備も仕事のひとつです。
1. 幼稚園で勤務する際の一日の流れ
幼稚園で勤務する際の具体的な仕事内容や一日の流れは、以下の通りです。
時間 | 仕事 |
---|---|
6:00 | ・出勤・登園前準備(教室や園庭の準備、子どもを迎える準備など)・クラス担任や職員との打ち合わせなど |
8:00 | ・登園する子どもたちの迎え入れ・子どもたちの登園確認や健康チェック |
9:00 | ・朝の会・知育活動や学習活動(室内遊び、工作、園庭開放など)・事故防止のため子どもたちの見守りなど |
12:00 | ・昼食・子どもたちの見守り・食育や食事のマナー指導・生活習慣の定着への取り組み(歯磨きチェックなど) |
13:00 | ・安全を確認しながら自由遊び・連絡帳の記入・帰りの支度(着替えなど) |
14:00 | ・降園する子どもたちの見送り・教室や園内の掃除など |
15:00 | ・事務作業(保育記録や園だよりの作成、行事の計画や準備など)・教室の装飾・備品の整理・職員会議・保護者への連絡・翌日の準備など |
19:00 | ・退勤 |
上記は、あくまでスケジュールの一例です。子どもたちの登降園時間や幼稚園の方針によって、時間や内容に違いがあります。
たとえば、送迎バスがある幼稚園では、添乗業務が必要となることもあります。延長保育を行う幼稚園では、おやつの準備や子どもを迎えにくる保護者の対応なども大切な仕事です。
幼稚園で働くことが向いている人
幼稚園で働くことには、以下のメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・子どもの初めての学びに関わることでやりがいを感じられる ・夏休みや冬休みがあるため長期休暇を取れる ・おむつ替えやお昼寝がなく教育に集中できる | ・子どもと接する業務以外にも行う作業が多い ・行事前など残業が発生することもある |
幼稚園教諭は、年齢や季節などに合わせて活動内容を決定するため、幼児教育に興味がある人に向いている仕事です。0~2歳児に比べてコミュニケーションも取りやすく、子どもたちの反応や理解する姿にやりがいを感じながら働くことができます。
幼稚では、裏方の仕事も少なくありません。時期によって忙しくなることもありますが、仕事内容や時間帯が大きく変わることがないため、ルーティーンで働きたい人にも向いています。
ただし、子ども相手の仕事であるため、子ども同士のトラブルやケガなどには柔軟な対応が必要です。
働きやすい幼稚園の特徴は?
勤務する幼稚園選びの際には、働きやすい幼稚園の特徴を知っておくことが大切です。自分に合った職場を見つけられれば、快適な環境で長く働くことができます。また、勤務先を決める際に、自分にとって最優先の項目が何かを見極める際にも役立つでしょう。
以下では、働きやすい幼稚園の特徴を解説します。
1. 教育方針が自分に合っている
幼稚園での働きやすさは、園の教育方針が自分に合っているかどうかに大きく左右されます。教育方針とは、園として掲げた教育の理想を、実際の業務に落とし込んだものです。
自分の考えと希望園の方針が合っていないと、仕事がやりづらかったり、やりがいが持てないと感じたりする可能性があります。入園案内やホームページなどをよく読み、理念や保育内容を確認しておきましょう。
2. 環境・設備が整っている
幼稚園の環境や設備は、子どもたちが安全に過ごせるかどうかに関わる重要なポイントです。子どもたちがトラブルなく過ごせる環境を整備している園は、安全管理が行き届いており、スタッフも働きやすいと考えられます。
具体的な確認箇所として、以下のような点が挙げられます。
・施設が衛生的であるか
・利用する保育室やロッカー、水回りなどの設備が使いやすく、華美な装飾がされていないか
・園庭が手入れされているか
・園の周囲に自然があるか、騒がしくないか
・防犯がしっかりとされているか
また、通勤しやすさも重要です。自転車通勤・マイカー通勤など、それぞれの場合を想定して、ルートや所要時間などをイメージしてみましょう。
3. ベテランの先生が活躍している
ベテランの先生が活躍しているかどうかを確認することで、園で勤務する先生たちの定着率を知ることができます。勤続年数の長い先生がいるということは、長期的に働きやすい安定した職場だと言えるでしょう。
結婚や出産など、自身の生活スタイルが変化しても働き続けたい人は、復職率や産休・育休取得率などのほか、サポート制度などを確認しておくことがおすすめです。
4. 労働条件に無理がない
理念や教育方針が理想的でも、給与が著しく低かったり、労働時間が極端に長かったりする場合は、大きなストレスを抱えることになりかねません。教育方針や給与だけでなく、業務内容・残業時間・休日数などもしっかり確認しましょう。
また、必要な手当がきちんと支給されるか、福利厚生が整っているかどうかも確認しておけば、安心して働くことができます。
5. 先生や子どもの表情が明るい
勤務する園を選ぶ際には、先生や子どもの表情が明るいかどうかもチェックしましょう。子どもが笑顔で過ごしていることは、よい幼稚園の大前提だと言えます。つまらなそうな園児を放置しているような園は要注意です。
また、子どもたちだけではなく、先生がストレスなくいきいきと働いているかどうかも注意して見てみましょう。先生方の人間関係が良好で、困ったことがあればすぐに相談できそうか、連携が取れているかをしっかりと確認することが大切です。可能であれば同僚となる先生方に働き方ややりがいなどに関する質問をし、情報を集めるとよいでしょう。
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まとめ
幼稚園では、満3歳以降の未就学児を対象に「幼稚園教育要領」に沿った教育を行います。教育の場である幼稚園で働くためには、幼稚園教諭免許が必須です。
幼稚園教諭の仕事には、カリキュラムに基づく子どもたちへの指導だけでなく、事務作業や保護者への連絡対応なども含まれます。幼稚園教諭は、日々こなさなければならない作業が多い一方で、やりがいも大きい仕事です。
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