小規模保育園は、「子ども・子育て支援新制度」に基づき新設された保育施設です。各自治体で保育基準を決めることができるため、地域の保育ニーズに合う質の高いサービスを提供することができます。
当記事では、小規模保育園とはどのような施設なのか、小規模保育園の勤務環境や仕事内容について詳しく解説します。小規模保育園が向いている人の特徴も紹介するため、小規模保育園を就職先の候補に入れようか迷っている場合はぜひ参考にしてください。
小規模保育園とは?一般的な認可保育園との違い
小規模保育園とは、0~5歳児を対象とした定員6~19名で運営される保育園のことで、認可保育園(※)の一種です。以前は0~2歳児が対象でしたが、2023年4月から3歳以上の子どもも受け入れ可能となりました。
※認可保育園とは、児童福祉法で定められた職員配置や施設面積、設置場所などの細かい基準をすべて満たす児童福祉施設として、厚生労働省に認可された保育園です。
小規模保育園が作られた背景には、待機児童の問題があります。小規模保育園は一定の基準を満たせばマンションの一室など、限られたスペースにも設置できます。一般的な保育園のように園舎や園庭を整備する必要がないことから、開園のハードルが低く、待機児童問題の解消に大きな役割を果たすことが期待されているのです。
小規模保育園は、一般的な認可保育園より利用定員が少ないため、家庭的な雰囲気が特徴です。子どもたち一人ひとりとじっくり関わりながら保育ができます。
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小規模保育園の3つの種類
小規模保育園は、児童福祉法における「地域型保育事業(市町村による認可事業)」の1つである「小規模保育事業」として位置づけられています。小規模保育園はA型、B型、C型の3つに分けられ、それぞれ必要な職員数や職員資格などが異なります。
A型 | B型 | C型 | |
利用定員 | 6~19名 | 6~10名 | |
職員の配置 | 保育所の配置基準である
0歳児:園児3人に対して1人 1~2歳児:園児6人に対して1人 に加え、さらに1人配置 |
0~2歳児:園児3名に対して1名
補助者を置く場合は 0~2歳児:園児5名につき1名 |
|
職員の資格 | 保育士
※保健師、看護師又は准看護師の特例有 |
1/2以上が保育士
※保育士以外には研修を実施 ※保健師、看護師又は准看護師の特例あり |
家庭的保育者
※市町村長が行う研修を修了した保育士、 保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村長が認める者 |
保育室等 | 0・1歳児:1人あたり3.3㎡
2歳児:1人あたり1.98㎡ |
0~2歳児:1人あたり3.3㎡ |
A型は保育所の分園のようなイメージで、B型はA型・C型の中間のような位置づけです。さまざまな事業形態からの移行が円滑に行われるよう、B型は保育士の割合を1/2以上としていますが、保育所の設置基準+1人の職員を追加配置することで、保育の質の確保を図っています。
C型は家庭的保育(グループ型小規模保育)に近い形の園です。保育士資格保有者の配置が必須ではないため、家庭的保育者のみでも保育ができます。
小規模保育園の入園方法と保育料
小規模保育園への入園を希望する場合は、一般的な認可保育園と同様に、保護者が市区町村の指定の窓口にて手続きを行います。必要書類を提出したら、その情報を元に入園点数の計算がなされます。点数が高いと「保育の必要性が高い」と判断され、保育園への入園が優先的に決定される仕組みです。
小規模保育園は、認可保育園の一種ですので、市区町村が定めた保育料が設定されています。世帯年収や保育時間、子どもの年齢、人数などに応じて保育料が算出されます。
小規模保育園における仕事内容
小規模保育園は少人数保育になるものの、基本的な保育内容は一般的な保育所と同じです。
食事や着替え、トイレのお世話などの生活習慣の指導、成長に必要な遊びやイベント活動・プログラムを通して、子どもの心身の成長と発育をサポートします。
小規模保育園で勤務する際の一日の流れ
基本的な一日の流れは通常の保育所とほとんど変わりません。施設によって保育方針や年間カリキュラム、月案・週案などの指導案は異なりますが、一般的には以下のようなスケジュールで、子どもの生活リズムを整えながらお世話をします。
時間 | 仕事内容 |
---|---|
8:00 | ・登園 ・児童の受け入れ ・健康観察 |
9:00 | ・排泄サポート ・おむつ替え ・遊び |
11:30 | ・昼食 |
13:00 | ・午睡 ・交代で休憩 |
15:00 | ・おやつ |
16:00 | ・遊び |
17:00 | ・順次降園 |
18:00 | ・延長保育 |
0~2歳児はまだ自立できていないことが多く、遊んでいるときや食事のときなど、常に寄り添ったサポートが求められます。子どもたちの昼寝中に交代で休憩を取るケースがほとんどですが、子どもが寝ている間に事務作業を行うこともあります。
保護者のお迎えが来るまでの間は、忙しい一日を送ることが多いでしょう。
小規模保育園で働くメリット
小規模保育園は一般的な保育所とは異なる特徴を持つ施設であるため、特有の仕事の魅力や保育士にとってのメリットが存在します。小規模保育園の仕事の魅力や他の施設と比較したときの働きやすさを正しく把握し、自分に合う就職先であるかどうかを見極めましょう。
子ども一人ひとりにきめ細やかな保育ができる
小規模保育園は少人数制の保育施設であることから、子どもたち一人ひとりと丁寧に関わり、きめ細やかな個別支援を実践できます。そのため、子どもたちや保護者と真摯に向き合い、家庭的な保育を実践したい保育士にとっては、働きやすい環境でしょう。
また、小規模保育園の人員配置基準は一般的な保育所と比較し、職員に対して良心的な設定です。そのため、小規模保育園では余裕のある人員配置で働ける可能性が高く、質の高い保育を実践しやすい環境です。
体力的な負担が小さい傾向にある
小規模保育園で預かる子どもは低年齢児に限定されることから、大きな遊具を使用したり激しい動きを伴ったりする外遊びを提供しません。そのため、一般的な保育所から小規模保育園に転職することにより、体力面の負担を軽減できる可能性があります。
ただし、まったく体力が必要ないとは言えず、乳児を抱き上げたり、保育用具を運んだりすることがあります。無理なく業務をこなすためには、日頃から身体を動かす習慣をつけて、体力作りに励みましょう。
行事や残業が少ない
小規模保育園では一般的な保育所ほど頻繁に、大規模な行事やイベントを実施しません。そのため、行事などの準備を進めるための残業が発生しにくく、安定的に働けます。
小規模保育園で実施する行事などのねらいは、一般的に保護者と子どもが楽しく参加し、思い出を作ることです。一般的な保育所のように連日の準備や練習を必要とする行事を実施することは少なく、保育士の負担も軽減されます。
他の職員や保護者と連携を取りやすい
小規模保育園は一般的な保育所と比較し、少人数の職員で運営されます。そのため、他の職員と比較的容易に、コミュニケーションをとることが可能です。下表は、一般的な保育所と小規模保育園の平均職員数を示します。
平日 | 土曜日 | |
一般的な保育所 | 25人 | 12.2人 |
小規模保育園 | 8.5人 | 3.0人 |
小規模保育園で働く職員の人数は平日・土曜日ともに、一般的な保育所で働く職員の人数を大幅に下回ります。職員の人数が少ない分、人間関係のトラブルに巻き込まれるリスクも低く、心理的な負担が軽減されるでしょう。
また、小規模保育園では保護者対応の時間を、比較的多く確保できます。そのため、保護者と密に連携し、子どもの心身の発達を助けることが可能です。
小規模保育園で働くデメリット
小規模保育園は多くの魅力ややりがいを伴う職場であるものの、働く上での注意点も存在します。小規模保育園に就職・転職する際にはデメリットを正しく把握した上で、応募することが大切です。
以下では、小規模保育園に就職・転職する人が注意したいデメリットを解説します。
在籍する保育士数が少ない
小規模保育園は、在籍する保育士が少なく、職員一人ひとりの裁量が大きいと言えます。0〜2歳児は心身の成長・発達が著しい時期の子どもです。そのため、小規模保育園で働く保育士は保護者とともに子どもの一生を左右するほど、重大な責任を負います。
乳児保育では些細な気のゆるみが思わぬケガや事故につながるケースも多く、あらゆる事態を想定した上で細心の注意を払い、保育業務にあたることが大切です。小規模保育園に就職・転職する際には保育士としての責任感や慎重さなどをアピールするとよいでしょう。
保育士によってスキルが異なる
小規模保育園には、さまざまな職員が在籍しており、中にはこれまで乳児保育を経験していない人もいます。また、小規模保育園のB型・C型では、保育士資格を持つ人以外も職員として在籍し、働くことが可能です。職員によって保育スキルに差が見られるため、小規模保育園では保育士資格を持つ人や経験者が、他の職員をフォローすることも必要です。
保育士資格を持たない人が小規模保育園に就職・転職する際には、所定の研修を受講する必要があります。しかし、研修を受講してもなお、経験豊富な保育士ほど臨機応変な対応をとれない可能性は高く、職員同士の助け合いが不可欠です。
設備が整っていないことがある
小規模保育園の中には、都心のビル内に設置されるタイプの施設もあります。ビル内に設置されるタイプの施設には広い園庭がなく、活動内容が制限されるケースもあるでしょう。
狭い空間で子どもたちを楽しませるためには、職員の工夫が必要です。小規模保育園で働く際には、子どもたちに充実した保育環境を提供するための工夫を怠らず、日々の業務にあたりましょう。
幅広い経験を積みにくい
小規模保育園では、乳児保育に特化した保育スキルが必要です。低年齢児クラスの担当経験が少ない保育士は保育内容を覚えるために、一定の努力が必要でしょう。
また小規模保育園では、幼児クラスを担当したり幼児教育に携わったりすることが困難です。そのため、保育士としての将来的なキャリアプランが制限されることもあります。その分、小規模保育園では、乳児保育の専門知識を身につけることが可能です。
小規模保育園の給料・待遇
小規模保育園は、福利厚生が充実している施設が多く、給料も比較的高い傾向にあります。
以下は、2019年に内閣府が行った調査結果をもとに、私立の保育所と私立の小規模保育園における保育士の給与月額をまとめた表です。
職種 | 常勤の給与月額(賞与込み) | 非常勤の給与月額(賞与込み) | |
---|---|---|---|
私立保育所 | 保育士 | 301,823円 | 187,816円 |
保育補助者(無資格者) | 223,584円 | 168,561円 | |
A型 | 保育士 | 268,755円 | 172,324円 |
保育補助者(無資格者) | 235,183円 | 170,387円 | |
B型 | 保育士 | 269,617円 | 192,001円 |
保育補助者(無資格者) | 231,115円 | 161,931円 | |
C型 | 家庭的保育者 | 291,775円 | 208,911円 |
家庭的保育補助者 | 250,117円 | – |
出典:内閣府「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】」
小規模保育園の場合、常勤保育士の給与はC型がもっとも高く、A型とB型の給与差はほとんどありません。
私立の保育所で働く保育士の給与と比べると、小規模保育園で働く保育士の給与がやや低めな理由は、小規模保育園は勤続年数が短いためだと考えられます。保育所の保育士の平均勤続年数は11.2年ですが、小規模保育園の保育士の平均勤続年数は約8年です。
また、小規模保育園では大きな行事が少なく、一般的な保育所に比べると残業や持ち帰りの仕事が発生しにくいことも、給与に差が生じている原因のひとつでしょう。
私立の保育所よりは給与が低いものの、通常の保育所とは変わらない待遇で無理なく働ける環境が整っていることは、小規模保育園の魅力だと言えます。
小規模保育園の求人の特徴と探し方
厚生労働省が行った「令和4年社会福祉施設等調査の概況」によると、全国の小規模保育園の数は5,895園で、前年度より100園以上増加しています。施設数の増加に伴い、小規模保育園の求人数も年々増えていると考えられます。
小規模保育園は都市部に多いことから、東京都や千葉県、愛知県や大阪府などの大都市を中心に求人が多い傾向にあります。しかし、昨今の働き方の多様化や保護者からのさまざまなニーズに合わせ、地方都市にも小規模保育園が開園しているため、全国的に求人は見つけやすいでしょう。雇用形態は正社員だけでなく、パートの募集もあります。
小規模保育園の施設形態は、院内保育所・企業内保育所などの種類があります。院内保育所とは医療従事者のニーズに対応し、医師や看護師の子どもを預かる施設です。企業内保育所では、一般企業に勤務する従業員の子どもを主に預かります。
大規模な病院の運営する院内保育所・大手企業の運営する企業内保育所は充実した福利厚生制度を約束することも多く、安心して働ける環境です。
小規模保育園の求人を探すときは、マイナビなどの求人サイトを使ったりハローワークに行ったりする方法があります。他にも求人情報が園に掲示されている場合や、園の公式ウェブサイト上に掲載されている場合もあります。自分に合った方法で、小規模保育園の求人を探しましょう。
小規模保育園で働くことが向いている人
小規模保育園は、低年齢児を対象とした保育施設であるため、乳児保育に興味がある人にとって働きやすい施設です。アットホームな雰囲気で運営されている施設が多く、家庭的な保育環境で働きたい人にもおすすめです。
低年齢児を保育する際は、子ども一人ひとりとじっくり向き合い、自立に必要となる基本的な生活習慣を繰り返し教えることが大切です。そのため、子どもと根気よく接するだけでなく、小さな変化を感じ取りながら成長を喜べる人も小規模保育園が向いています。
また、小規模保育園では保育従事者1人に対する子どもの人数が少なく、定員数が多いほど1クラスあたりの職員数が増えるため、複数担任となります。保育士や職員同士の連携が必要となることから、コミュニケーション能力が高い人も向いている職場と言えるでしょう。
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まとめ
小規模保育園は、0~5歳児を対象とした定員6~19名の認可保育園の一種です。一般的な認可保育園は定員が20名以上であることから、アットホームで落ち着いた雰囲気の中で、保育が行われている点が特徴と言えます。
「一人ひとりの子どもとじっくり関わりたい」「学年関係なく、園全体の子どもたちを見守りたい」という人は小規模保育園がぴったりでしょう。また、認可保育園と比較すると、行事などが少なく、残業や持ち帰りの仕事も少ない傾向にあります。職員の人数も少ないため、連携が取りやすいのも小規模保育園で働くメリットです。
一方、施設によっては保育士資格を持っていない職員も保育士同様に働いていることから、保育士の負担が大きくなる場合もあります。また、乳児を対象としている施設がほとんどのため、幼児の保育経験が積みにくいのはデメリットの1つとも考えられます。
小規模保育園の特徴を理解した上で、自分はどのような場所でどのような働き方がしたいのか検討することが大切です。 転職支援サービスや非公開求人がある「マイナビ保育士」を利用し、さまざまな小規模保育園の求人の中から希望の勤務先を見つけましょう。
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