未満児とは?未満児クラスでの保育士の働き方、やりがいを解説

文:アリサ(保育士ライター)
保育施設では、たびたび「未満児」という用語を使用します。この未満児とは何歳のことを指すのでしょうか。
この記事では、未満児の意味や、未満児クラスがある施設を紹介します。あわせて、未満児クラスでの保育士の働き方ややりがい、未満児クラスの保育において大切なポイントも解説しています。
未満児とは?
未満児とは「3歳未満児」を略したもので、0歳児、1歳児、2歳児のことを指します。
保育園やこども園でよく使われる「未満児クラス」とは、いわゆる乳児クラスを意味します。幼稚園は3歳児から入園する場合がほとんどのため、2歳児クラスを「未満児クラス」と呼ぶこともあります。
なお、未満児と区別して3歳児から5歳児までは「以上児」と呼ばれます。呼び方は施設によって異なり「3以(さんい)」と略している園もあります。
未満児 | 3歳未満児。0歳児から2歳児のこと。 |
未満児クラス ※保育園やこども園 | 乳児クラスのこと。 |
未満児クラス ※幼稚園 | 2歳児クラスのこと。 |
以上児・3以(さんい) | 3歳児から5歳児のこと。 |
未満児クラスがある保育施設
未満児クラスがある保育施設は保育園以外にもあり、施設によって特徴や受け入れ人数、職員構成も異なります。
ここでは、未満児クラスがある保育施設の概要を紹介します。
認可保育園
認可保育園は、児童福祉法に基づいて国が定めた設置基準を満たし、都道府県知事の認可を受けた保育園です。対象年齢は、0歳児から5歳児までが一般的です。
保護者の就労といった、さまざまな理由から保育を必要とする未満児を預かる施設ですが、未満児を預かるだけでなく、地域における子育て支援や相談を受けるなど、社会的役割も担っています。
認可保育園は保育料の無償化のメリットが大きいため、入園希望者が多い傾向にあります。しかし、未満児は3歳以上と比べて定員が少ないケースがほとんどで、地域によっては希望の園に入園できない場合も多いようです。
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認可外保育園
認可外保育園は、都道府県知事の認可を受けていない保育園で「無認可保育園」と呼ばれることもあります。多くの施設で未満児の受け入れを行っています。
認可外保育園は、条件的に認可保育園に入りにくい場合や様々な事情を抱えている未満児でも入園しやすいため、待機児童問題の解消に大きな役割を果たしています。
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認定こども園
認定こども園は教育・保育を一体的に行う施設で、幼稚園と保育園、それぞれの良さを併せ持っています。0歳児から5歳児を対象としています。
保育園や幼稚園がこども園に移行する場合も多く、地域の未満児保育の受け皿としての役割を担っています。
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幼稚園
幼稚園は、基本的には3歳児から5歳児までの幼児を対象としていますが、園によっては2歳児クラスを設けており、保護者同伴で保育を行う場合と、未満児のみを預かり保育を行う場合があります。
幼稚園の未満児クラス(2歳児クラス)は、3歳児からの幼稚園生活に慣れるための前段階としての役割を担っており、基本的な生活習慣を身につけたり、友だちとの関わりなかで社会性を培ったりできるような援助を行います。
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地域型保育園
地域型保育園は、0歳児から2歳児の未満児を対象とした保育園です。地域型保育園には以下のような種類があります。
- 小規模保育事業:定員が6名から19名以下と小規模な施設型の保育事業
- 家庭的保育事業:家庭的な雰囲気のもと、3人までの子どもを保育ママが預かる保育事業
- 居宅訪問型保育事業:保育が必要な乳幼児の家で、家庭的保育者が保育を行う保育事業
- 事業所内保育事業:事業所内で働く従業員の子どものための保育事業
地域型保育園は、家庭や企業内、商業施設といったスペースも活用することで未満児の待機児童の解消の一端を担っています。また、保育時間も様々で多様な働き方に対応できるため、主に都市部における保育ニーズにも応えています。
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乳児院
乳児院は、家庭のさまざまな事情で家族と一緒に暮らすことができない赤ちゃんや幼児とその家族を支える施設です。原則として、1歳未満の乳児を保護し、養育する施設とされていますが、実際には3歳頃まで入所しているケースもあります。2004年の児童福祉法改正によって必要に応じ、乳児院でも就学前までの子どもを預かることが可能になりました。
乳児院では、赤ちゃんの保護と養育を行うほか、保護者や里親の支援も行います。乳児院によっては、地域の子育て支援の役割を担っている場合もあります。
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その他の保育施設
ここまでに紹介した各施設の他、クラスとしては設けていなくても下記の施設にも、未満児が入所・通所している場合があります。
- 障害児入所施設:障害のある児童を入所させ、保護や日常生活の指導などを行う施設
- 児童発達支援センター:地域に住む障害のある児童を通所させ、日常生活の指導や集団生活への適応のための訓練を行う施設
未満児クラスでの保育士の働き方は?
未満児クラスに配置される保育士の人数は、0歳児なら3人に1人、1・2歳児なら6人に1人です。3歳児は20人に1人、4歳児以上は30人に1人なのに対し、未満児クラスでは保育士一人あたりが見る子どもの人数が少なくなっています。そのため、子ども一人ひとりと深く関わりながら、成長を見守ることができます。
未満児の時期は、一人ひとりの発達の個人差が大きく、心身の成長スピードも速いのが特徴です。発達の個人差が大きいということは、生活リズムも異なるということです。特に0歳児の子どもは、生活リズムが一人ひとり異なります。月齢に応じて午前睡(午前中の昼寝)を取り入れたりミルクのタイミングを変えたりし、子どもに応じた柔軟な関わりが必要とされます。
また、離乳食期の子どもに関しては、発達段階や食べ方を踏まえ、管理栄養士や給食調理員とも連携を取りながら離乳食の形態を変化させる必要があるのも、未満児クラスならではでしょう。
さらに以上児と違う点として、午前のおやつが設けられていることが挙げられます。未満児は一度に食べられる量が少ないため、成長に必要な栄養や水分を補給する「補食」としておやつを与えます。
一日のスケジュールとしては、以上児クラスと大きく変わらないケースがほとんどです。
未満児クラスの保育で大切なこと
一人ひとりの発達の個人差が大きい未満児クラスの保育で大切なこととして以下が挙げられます。
十分に思いを受け止め、信頼関係を築く
子どもが安心して気持ちを表現できる関係性を作っていくことが大切です。未満児の子どもたちと関わるときには、保育士が子どもの思いを汲みとり、「~をしたかったんだね」と意識的に言葉にしましょう。
未満児の子どもたちは、特定の大人と継続して関わり、身の周りのお世話をしてもらったり、思いを汲んでもらったりする経験を通じて「愛着関係」が深まっていきます。子どもは特定の大人との愛着関係が深まると、その大人を「安全基地」として、次第に周囲に興味関心を広げていきます。周囲に目を向け、興味のあるものに自ら関わっていく力は、「主体性」の発達へと繋がっていくでしょう。
自分の思いを十分受け止めてもらい「自分が大切にされている」「自分は無条件に愛されている」と子ども自身が感じられると、周囲に対し「基本的信頼感」が芽生えます。身近な大人への基本的信頼感の芽生えは、自分に対しての信頼感にも繋がり、幼児期以降の発達にも大きく影響するものです。
未満児クラスの保育士は、日常のさまざまな場面で子どもの気持ちに十分寄り添い、受け止める姿勢が大切だといえるでしょう。
基本的な生活習慣の形成
子どもたちが基本的な生活習慣を身につけていけるよう、一日を通して援助しましょう。基本的な生活習慣とは「食事」「睡眠」「排泄」「清潔」「衣服の着脱」を指します。これらは、これから生きていくために必要な力であり、社会生活に対応する基本的な力となるものです。
未満児の時期には、生活のリズムを整えながら自分でできることを少しずつ増やせるようにしましょう。例えば「手づかみやスプーンを使って自分で食事をする」「手の洗い方を知る」「自分で着替えてみる」などが挙げられます。
無理強いするのではなく、毎日の生活のなかで自然とやり方を伝えることがポイントです。子どもの「自分でやってみたい」という気持ちを大切にしながらさりげなく援助し、「できた!」という達成感を子どもが味わえるように関わるとよいでしょう。
子どもに合った環境を用意する
未満児クラスの子どもは身体の発達の差が大きい時期です。特に0歳児クラスでは、ねんね期の子どももいれば、つかまり立ちや、つたい歩きをしている子どももいるでしょう。それぞれの子どもが安全に、思いきり身体を動かせるような環境構成や保育を心がけることが大切です。
また、子どもの発達段階に合った難易度のおもちゃを用意してあげることも必要です。手先の発達を促し、「もっとやってみたい」という意欲に繋がるでしょう。
未満児クラスで働くやりがい
保育士は、子どもの成長をすぐそばで見届けられる仕事です。担当するクラスによって子どもの姿が違うため、やりがいもさまざまです。
ここでは、未満児クラスで働くやりがいを紹介します。
日々の成長を見届けられる
未満児は、毎日の成長が目覚ましい時期です。昨日までできなかったことができるようになったり、新しいことに挑戦する姿が見られたりします。そんな子どもたちの成長を近くで見届けられるのは、未満児クラスで働くやりがいの一つでしょう。
一人ひとりとしっかりと向き合える
未満児クラスは、以上児クラスと比較すると保育士一人が見る子どもの数が少ないため、一人ひとりの子どもたちとしっかりと関わりながら保育ができます。
また、子どもたちと関わるなかで、次第に子どもが自分に対し心を開いてくれている様子が分かると「信頼されている」「安心してくれている」と感じられ、やりがいに繋がるでしょう。
保護者と二人三脚で子どもを支えていける
未満児クラスの保育士は、保護者と子どもの成長を一緒に喜んだり、ときには悩みを聞いたりしながら、保護者と近い距離で過ごせるのもやりがいの一つといえるでしょう。
未満児は日常生活の多くで大人の援助を必要とし、保護者の身体的・精神的負担も大きくなりがちです。保護者によっては子育てだけでなく、仕事や介護などさまざまな負担を抱えている場合があります。そのような保護者にとって、保育士は心のよりどころともいえるでしょう。
未満児は心も身体も大きく成長する時期
未満児とは、0歳児から2歳児を指し、保育施設などで使われることが多い言葉です。未満児を対象とした施設は、保育園以外にも種類があり、それぞれ対象年齢や保育士の設置基準、特徴は異なります。
未満児は、一人ひとりの成長発達の個人差が大きく、それぞれのペースで心も身体も大きく成長する時期です。身近な大人からの愛情を十分に受け、愛着関係や人との基本的信頼関係を身につけていく心の根っこを育てる時期でもあります。
日々の成長をすぐそばで見守れることや一人ひとりの子どもたちとじっくり関われることが、未満児クラスを担任するやりがいといえるでしょう。
保育園で0歳児から5歳児までの担任や障がい児加配、縦割り保育を約10年間経験しました。家庭の事情で退職後、今までの知識を活かした活動がしたいとの思いからライターに。現在は2歳と5歳の子どもの育児に奮闘しながら、保育士さんや子育て中の方に向けて記事執筆を行っています。絵本とお花が大好きです。
保有資格:保育士・幼稚園教諭一種免許
参考サイト: